愛知の工場を飛び出しプロダーツプレイヤーの夢へ走り出した20歳の出張ホスト

T・I(20歳)

工場を飛び出した僕が、東京を目指すまで

愛知県の田舎町で育った僕は、ずっと東京に憧れていました。でも勉強が得意なわけでもなく、大学進学という選択肢は最初からほぼ頭にありませんでした。高校を卒業してからは、とりあえず地元の工場に就職。毎日同じ時間に起きて、ベルトコンベアーの前に立って、同じ作業を繰り返して家に帰る。それだけの日々です。最初の1ヶ月は「まあこんなもんか」と思っていましたが、2ヶ月目あたりからじわじわと「このままでいいのか」という気持ちが出てきて、3ヶ月で退職しました。逃げたと言われれば否定できませんが、正直あの環境に3ヶ月耐えただけでも自分をほめてあげたいくらいです。

その後は地元の居酒屋でアルバイトを始めました。工場と違って人と話せる仕事は、それだけで全然楽しかったですね。常連のお客さんと軽く雑談したり、バイト仲間と閉店後にダーツをしたり、ささやかだけど充実した時間でした。ところがそのバイト仲間のひとりが、突然「東京でホストになる」と言い出して辞めてしまったんです。羨ましいような、無謀なような、なんとも複雑な気持ちでしたが、その一件があってから、東京への気持ちがまたむくむくと湧き上がってきたのは間違いありません。

「出張ホスト」との運命的な出会い

友達が辞めた後も、東京のことが頭から離れませんでした。ある夜、何となく東京のナイトワーク系の求人サイトを眺めていたときに、「出張ホスト」という文字が目に飛び込んできました。ホストと何が違うのかと思って、いろいろ調べてみると、これがかなり自分向きだとわかってきました。お酒が弱くても大丈夫、基本はお客様とのマンツーマン、ノルマなし、経験不問。どの条件も「それなら僕でもできるかも」と思える内容で、読み進めるうちにどんどん前のめりになっていきました。

そして何より目を引いたのが、無料の寮でした。タダで新宿に住める、という一行を見た瞬間、「これは行くしかない」と思いました。手持ちの貯金は約30万円。親には「東京で就職が決まった」とちょっとだけ話を盛りながら、面接のために上京することを決めました。我ながら大胆な決断でしたが、あの瞬間のワクワク感は今でも覚えています。ドキドキしながら新幹線に乗って、初めて一人で東京の地に降り立ったときは、なんかもう全然違う世界に来たような感じがしました。

新宿の寮から、新大久保の部屋へ

面接は無事に通過して、寮への入寮も決まりました。住民票の移転や風営法関係の手続きなど、初めてのことだらけで正直よくわからないことも多かったですが、スタッフさんが丁寧に教えてくれたのでなんとかなりました。そしていよいよキャストデビューです。最初のうちは本当に慣れないことの連続で、お客様の前でうまく話せなかったり、どうふるまえばいいか迷ったりすることも多かったです。それでも、先輩キャストさんやスタッフさん、そして温かいお客様たちに助けてもらいながら、少しずつ自分のペースをつかんでいきました。

デビューから3ヶ月が経つ頃には、引っ越し資金がしっかり貯まっていました。そこで新大久保のワンルームマンションに引っ越すことができたんです。部屋は正直かなり狭いですが、それでも自分で選んで、自分で契約した、自分だけの空間です。荷物を運び込んだあの日の達成感は、工場でベルトコンベアーを眺めていた頃とは全然違う感触でした。少しずつだけど、ちゃんと前に進んでいる。そのことが、シンプルにうれしかったです。

ちなみに、あのときホストを目指して東京に出た地元の友達は、3ヶ月で厳しさについていけなくなり、地元に帰ってしまったそうです。お互い同じタイミングで東京に出たのに、その差はなかなか感慨深いものがありました。

ダーツと東京、そしてこれからの夢

東京に来てから趣味のダーツを通じて友達がどんどんできました。地元にいた頃も好きでしたが、東京のダーツバーのレベルはやっぱり違って、刺激的な出会いが続いています。練習を重ねるうちに大会にも出るようになり、そこでプロのプレイヤーと話す機会が増えてきました。その中で「自分もプロを目指したい」という気持ちが、だんだん本気になってきています。

ダーツだけで生活できるようになるには、まだまだ時間がかかると思っています。でも今の僕には、出張ホストという仕事があります。生活費に困ることなく、毎日ダーツの練習に集中できる環境が整っているのは、本当にありがたいことだと思っています。工場で毎日同じ作業を繰り返していたあの頃と比べると、今の生活は毎日やることがあって楽しいです。

このまま出張ホストで稼ぎながら、ダーツのプロを本気で目指す。そのシンプルな目標が、今の僕には一番しっくりきています。お金があれば夢に集中できるし、夢があれば毎日が楽しくなる。愛知の工場を3ヶ月で辞めたあの選択は、間違いじゃなかったと今なら自信を持って言えます。迷っている人がいたら、まず一歩だけ踏み出してみてほしいです。案外、その先の景色は思っていたより明るいですよ。

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