和菓子屋の跡取りが社会勉強のつもりで出張ホストの副業を開始

C・A(21歳)

家業を継ぐことに反感はないのですが…

僕の家は和菓子屋です。都内で代々続く、下町の、知る人ぞ知る和菓子屋といったところでしょうか。そもそもあまり儲かるようなビジネスモデルではないと思うのですが、幸い、こんなご時世でも根強い常連様のおかげで、なんとか体面を保って営業が続けられています。

僕は長男なので、息子の役目として、家事手伝いを小学生の頃からやってきました。時期ごとのイベントのものとか、常連様へのご挨拶とか、高校生くらいからは土曜日には両親の代わりに電話を取ることもやっていました。この年頃の人間にしては、おかげで、わりと礼儀正しい人間に育ったと思います。

ただ、正直なところ、そういう家の伝統みたいなものに、カタいものを感じてしまい疲れたことも一度や二度ではありません。両親にも相談し、何か新しいことをやってみたいという僕の意思を尊重してくれて、新宿の出張ホストという、かなり飛躍したバイトをやってみることにも、「家計を助ける」という名目でOKしてもらえたんです。

わりとすんなりとなじめました

和菓子屋の息子が副業で高額バイト、しかも経験のない水商売で、どうなってしまうんだろうと最初の頃は不安でした。いつも家のお店で接しているお客様とはまた雰囲気が違うんだろうな(当然ですが)、と思いつつ、でも、そういう心配を楽しんでいる自分もいました。

実際、ここに応募してからお会いしたお客様は本当に個性豊かで、たかが20年少し生きたくらいの自分の世界がどれだけ狭かったことかと思い知らされたのですが、そういういろんな「驚き」も、楽しんで受け入れることができました。これまでしたことのなかった、まったく縁のなかったことをやってみる、それも面白いものです。

わりと仕事にはすんなりとなじめたように思います。ヘンな緊張の方が邪魔になると思って、意識してそういうカタい意識みたいなものを取り払うようにしてからは、お客様の方でもすごいスムーズに親密な空気で接してくださるようになり、結果的に共に過ごす時間がとても充実したようになっていると思います。

社会勉強のつもりであと一年は続けます

高額バイト、と世間で言われていることも確かです。労力のわりに、すごく効率的に高収入が得られると思いますし、実際、僕が自分の家の仕事を手伝ってもらっているお金なんて、こういうと悪いですが、お小遣いレベルみたいな…。こちらの方が、やはり上です。

社会勉強のつもりで、これからも一年くらい、この仕事を続けられたら、と今は思っています。というか、むしろ本当に以前までの世間を知らない自分のまま、ただの和菓子屋の跡取りにおさまっていたら、それは相当、つまらない人生だったのかもしれない、という気がします。

稼げること、それがこの副業を続ける動機のひとつになっているのは間違いありませんが、僕の場合はそれだけではありません。この仕事を通して学ばせていただくことの大きさに、意義を感じています。

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